遺言書を作るとしたら どちら?
あなたが遺言書を作るとしたら
どんな時に、どのような遺言書を作るのでしょうか
普通方式の遺言書
①自筆証書遺言(民法968)
②公正証書遺言(民法969、969の2)
③秘密証書遺言(民法970)
特別方式の遺言…緊急時のものなので、遺言者が上記の普通の方式で遺言することができるようになった時から6か月間生存するときは無効となってしまうもの
①死亡危急時遺言(民法976)
②伝染病隔離者の遺言(民法977)
③在船者の遺言(民法978)
④船舶遭難者の遺言(民法979)
遺言書の中でも主に利用されている①自筆証書遺言と②公正証書遺言です。
①自筆証書遺言
文字通り、自筆の遺言です。全文、日付、氏名を自書し、印を押す。この印鑑は印鑑登録をした実印でなくても無効ではないのですが、実印で押した方が本人の意思で作成した証明にもなり、偽造と疑われなくなります。このことから、実印で押した方がよいでしょう。
また、財産目録を添付する場合の目録は自書でなくてもパソコン等で作成してもよいですし、預貯金ならば通帳のコピーでも可能です。
2020年7月10日より法務局で保管を申請することができるようになることから
それまでは逝去後に自筆証書遺言は封をあけて相続…なんてふうには用いることはできず
封を開けずに家庭裁判所による検認が必要です。家庭裁判所に検認を請求しなければなりません。
検認とは家庭裁判所で相続人などが立会いの下、遺言書を開封し遺言内容を相続人に知らせるとともに形式的なものを明確にして遺言書の偽造・変造を防止するためのものです。遺言内容が有効か無効かの判断するものではありません。この手続きには数か月を要するようです。
しかし
上記に記したように2020年7月10日からの自筆証書遺言の保管制度により、保管された自筆証書遺言については検認が不要となるため、この点は簡便になるようです。
この自筆証書遺言の保管制度は
保管に適する書類形式のもので、無封のまま法務局には本人が申請に行き、遺言書保管官が外形的確認をして本人確認もする。遺言書の画像情報を遺言書ファイルに保管してもらえます。
郵送や代理人による申請はできませんが、付添は可能だそうです。
ただし、この外形的確認は遺言書内容について、法的に有効無効を判断するものでないようなので遺言書について専門とする法律家にチェックを受けるか、公正証書遺言を作成したほうが最善ではあります。
②公正証書遺言
公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人の面前で、口授し(話す)、それに基づいて公証人が遺言書の真意を正確に文章にまとめ、公正証書遺言として作成するものです。
遺言者が署名できないときは、公証人がその旨を付記して、署名に代えることもできます。言語障害のある方も公正証書遺言を作成できるようになりました。入院中の場合などは病院へ公証人や立会人が行き作成することもできます。(別途費用あり)
原本の保管は公証役場に保管されます。公正証書ですから方式の不備で遺言書が無効になることもありません。破棄・偽造・隠蔽の恐れもありません。また、公証人が作成した公正証書ということで、家庭裁判所の検認も不要です。
相続開始後に速やかに遺言の内容を実現することができるのが公正証書遺言です。
遺言書を作成するために時間と費用に余裕のある方は公正証書遺言をお勧めします。
遺言撤回自由の原則
遺言者はいつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができます。(民法1022)
例えば公正証書遺言を作成して、10年の年月が経ち、相続に関する内容が変わるなど、思いの変化により内容を変えたい場合もあります。
そんなときは、新たに公正証書遺言や自筆証書遺言を作成することで撤回できます。
複数の有効な遺言書があっても、日付の最新のものが有効となります。
以前に遺言書を作成した方も、ご自分の今の状況を考えて、改めて遺言書を作成することもよいでしょう。
大切なのは遺言者の意思や想いが正しく伝わり、有効に引き継がれることです。